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対物賠償保険を無制限で契約している方は多いと思います。ただ、その「無制限」がどこまでを指しているのかを正確に説明できる方は、意外と少ないのではないでしょうか。
対物賠償には、知らないと事故のときに戸惑う特徴が2つあります。ひとつは「1台あたり」ではなく「1事故あたり」の限度額だということ。もうひとつは、無制限にしていても相手の車が直せるとは限らないということです。
この記事では、対物賠償の補償範囲と限度額の考え方、実際の高額賠償の事例を整理します。あわせて、時価額の低い旧車に乗っている私が、加害者側・被害者側の両方で感じていることも書きます。
対物賠償保険とは|相手の「物」を壊したときの補償
対物賠償保険は、事故で他人の物を壊してしまったときに、その損害を補償する保険です。
「物」といっても相手の車だけではありません。事故のはずみで壊してしまうものは選べないので、対象はかなり広くなります。
- 相手の車、トラックの積み荷
- ガードレール、信号機、標識、電柱
- 民家の塀、店舗の建物や什器
- 踏切事故で損傷させた電車
重要なのは、これらは自賠責保険では一切カバーされないという点です。自賠責が補償するのは相手のケガ・死亡だけなので、物損は最初から任意保険の領域になります。
なお、自分や家族の所有物を壊した場合は対象外です。自宅の車庫にぶつけた、といったケースは対物賠償では直せません。
限度額は「1台あたり」ではなく「1事故あたり」
ここを誤解している方が多い部分です。
対物賠償を1,000万円で契約している場合、これは1回の事故で支払われる総額の上限です。壊した相手が1台でも5台でも、上限は1,000万円のまま変わりません。
たとえば信号待ちの列に追突して玉突きになり、前の3台を巻き込んだうえに、はずみで沿道の店舗に突っ込んだとします。この場合、車3台の修理費+店舗の修復費+店舗の休業損害が合算されて、契約した限度額の中から支払われます。
「車同士の事故なら数百万円で収まるだろう」という感覚で限度額を決めていると、複数台が絡んだ瞬間に足りなくなります。
直接損害と間接損害|見落としやすいのは後者
対物賠償で支払う対象は、壊した物そのものの損害だけではありません。事故がなければ得られたはずの利益も賠償の対象になります。
| 内容 | 例 | |
|---|---|---|
| 直接損害 | 壊した物そのものの損害 | 相手の車の修理費、ガードレール・信号機の修復費、積み荷の損害 |
| 間接損害 | 事故によって失われた利益 | 店舗の休業損害、従業員の休業損害、電車の運休・遅延による損害 |
金額が跳ね上がるのはたいてい間接損害のほうです。店に突っ込んだ場合、建物の修理費より「営業できなかった期間の補償」が大きくなることは珍しくありません。
物損でも億単位になる|実際の賠償額
損保ジャパンが公表している物損事故の高額賠償事例を見ると、対物賠償を有限で契約する怖さがわかります。
| 認定損害額 | 壊した物 | 事故の状況 |
|---|---|---|
| 約2億6,000万円 | 積み荷(洋服・毛皮など) | 追突されたトラックが中央分離帯を越えて横転・炎上 |
| 約1億1,000万円 | 電車4両 | 踏切内に進入して列車と衝突 |
| 約2,700万円 | 大型貨物車 | 玉突き衝突 |
| 約1,500万円 | 大型貨物車 | 追突 |
注目したいのは踏切事故の1億1,000万円です。電車そのものの修理費に加えて、運休・遅延による損害が上乗せされます。これは特殊な事故ではなく、踏切で立ち往生すれば誰にでも起こり得ます。
トラックの積み荷も同様です。前を走っているトラックに何が積まれているかは外からわかりません。事故の相手も、壊す物も、こちらでは選べない——これが対物賠償に上限を設けるべきでない理由です。
そして現実的な話として、対物賠償を2,000万円にしても無制限にしても、保険料の差はごくわずかです。ダイレクト型では無制限しか選べない会社もあります。ここを削って浮く金額は、リスクにまったく見合いません。
無制限でも相手の車が直らない「時価額の壁」
ここが対物賠償のもうひとつの落とし穴です。
対物賠償で支払われる車の修理費は、その車の時価額が上限になります。「無制限」とは、正確に言えば「時価額の範囲内で無制限」という意味です。
相手が年式の古い車に乗っていると、この差が問題になります。
| 相手の車 | 修理費 | 時価額 | 対物賠償から出る額 |
|---|---|---|---|
| 新車に近い | 80万円 | 250万円 | 80万円(満額) |
| 年式の古い中古車 | 80万円 | 30万円 | 30万円まで |
修理費が時価額を超えると「経済的全損」となり、時価額までしか支払われません。相手からすれば、何も悪くないのに50万円を自腹で出すか、車を諦めるかを迫られることになります。示談が揉める典型的なパターンです。
この不足分を50万円まで埋めるのが対物超過修理費用特約です。支払条件(実際に修理することが必要)や、保険会社によって名称が違う点など、注意すべきところがいくつかあります。詳しくは対物超過修理費用特約は必要?対物無制限でも相手の車が直らない理由にまとめました。
【実体験】旧車に乗っていると、両方の立場が見える
私はNB8Cロードスターに乗っています。走行距離は12万kmを超えていて、中古車としての時価額は決して高くありません。
この立場だと、対物賠償を加害者側と被害者側の両方から考えることになります。
被害者側として見れば、ぶつけられたときに自分の車が直せるかどうかは、相手の契約内容に左右されます。修理費60万円に対して時価額が20万円と査定されれば、相手の対物賠償から出るのは20万円。相手が対物超過修理費用特約を付けていなければ、残りは自分で払うしかありません。
加害者側として見れば、逆のことが起こります。ぶつけた相手が大事に乗ってきた古い車だった場合、こちらの契約内容のせいで相手の車が直せないという事態になりかねません。
市場価値が低いことと、オーナーにとっての価値が低いことは別の話です。長く乗っている車ほど手を入れていますし、同じ状態の個体を探すほうが難しい。時価額という数字は、その車を維持してきた時間を反映してくれません。
だから私は対人・対物を無制限にしたうえで、対物超過修理費用特約も必ず付けています。相手が同じような車に乗っているかもしれない以上、そこを削る気にはなれません。
対物賠償を見直すときのチェックポイント
- 対物賠償が無制限になっているか(1,000万円・2,000万円などの上限になっていないか)
- 対物超過修理費用特約が付いているか。会社によって名称が違うので証券の表記を確認する
- 限度額が「1事故あたり」であることを理解したうえで金額を選んでいるか
対物賠償は削っても保険料がほとんど下がらないのに、削ったときのリスクだけが大きい補償です。保険料を下げたいなら、車両保険の条件や免責金額から見直したほうが効果があります。順番については自動車保険の見直し完全ガイドを参考にしてください。
まとめ
- 対物賠償は相手の車・ガードレール・店舗などの物損を補償する。自賠責では一切出ない
- 限度額は「1事故あたり」。玉突きで複数台を巻き込むと合算される
- 店舗の休業損害など間接損害も対象。ここで金額が跳ね上がる
- 物損でも2億6,000万円の認定例がある。踏切事故なら1億円超も
- 無制限でも支払いは相手の車の時価額まで。対物超過修理費用特約で補う
対物を無制限にすること自体は保険料にほとんど影響しません。差が出るのは、無制限を前提にしたうえでどの会社を選ぶかです。
保険料は「同じ補償」でも会社によって変わる
対物を無制限にして対物超過修理費用特約を足しても、会社によって保険料はかなり変わります。満期が近い方は、補償を削らずに保険料だけ下げられないか一度比較してみると、差がはっきりします。見積もり後に営業電話がかかってこないので、気軽に使えます。
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