あおり運転は、ここ数年で大きく社会問題化しました。2020年には妨害運転罪が新設され、厳罰化も進んでいます。
あおり運転は100%あおる側が悪い。これは大前提です。どんな理由があっても、他人の車に意図的に危険を及ぼす行為は許されません。
ただ、その大前提を踏まえたうえで、自分の走り方で「されにくくする」ことはできると思っています。
もちろん、どんなに気をつけていても理不尽にあおられることはあります。相手が最初からおかしい場合は、自分の走り方は関係ない。でも、あおり運転のきっかけの一部は、追越車線の使い方や車線変更のタイミングなど、自分の走り方で避けられるものもあるのが現実です。
この記事では、あおり運転を「されにくくする」ための走り方と、万が一あおり運転に遭ってしまったときのスマートな対処法をまとめます。
あおり運転のきっかけになりやすい走り方を知っておく
あおり運転をする側が悪いのは大前提ですが、きっかけのパターンを知っておくと、自分の走り方で避けられる場面があります。
あおり運転のきっかけとして多いのは、次のようなケースです。
- 追越車線をずっと走り続けて、後続の速い車をブロックする形になった
- 車線変更で相手の前に入ったとき、相手にブレーキを踏ませてしまった
- 合流で本線側の車の流れを遮る形になった
- 急な減速やブレーキで後続車を驚かせた
- ハイビームの切り替え忘れで対向車や前車を眩惑させた
これらは、やっている側に悪気がないことがほとんどです。追越車線を走り続けているのは、本人は気づいていないだけかもしれない。車線変更でブレーキを踏ませたのも、タイミングの問題かもしれない。
でも、相手がそう受け取らないことがある。自分にとっては「ちょっとしたこと」でも、相手にとっては「邪魔された」「危ない目に遭わされた」と感じる場合があるのです。
だからこそ、こうしたきっかけを知っておいて、自分の走り方の中でできる範囲で避ける。それが「あおられにくい走り方」の第一歩です。
追越車線を走り続けない
あおり運転のきっかけとして最も多いのが、追越車線の長時間走行だと言われています。
追越車線は、前の車を追い越すための車線です。追越が終わったら、走行車線に戻るのが基本。道路交通法でも、追越車線を走り続けること(通行帯違反)は違反として定められています。
ところが、実際の高速道路では、追越車線をずっと走り続けている車を頻繁に見かけます。本人は「自分は制限速度で走っているから問題ない」と思っているかもしれません。でも、後続に速い車がいる場合、追越車線を塞いでいる形になる。
後続の車から見ると、「前の車が邪魔で追い越せない」「どいてほしいのに動かない」という状態。ここからイライラが始まり、車間を詰めてきたり、パッシングしてきたり、最終的にあおり運転に発展するケースがあります。
追越が終わったら、走行車線に戻る。これだけで、あおり運転のきっかけのかなりの部分を減らすことができます。
私自身、高速道路では基本的に走行車線を走るようにしています。追越車線に出るのは、前の車を追い越すときだけ。追い越しが終わったら速やかに走行車線へ戻る。この習慣を持つだけで、後続車との不要なトラブルは大幅に減ると感じています。
車線変更で相手にブレーキを踏ませない
車線変更は、やり方によっては相手のストレスを大きく高める場面です。
特に問題になりやすいのが、相手の前に入って、相手にブレーキを踏ませる車線変更。自分では「十分にスペースがある」と思っていても、相手から見ると「急に前に入ってきた」「ブレーキを踏まされた」と感じることがあります。
車線変更で意識したいのは、以下のポイントです。
- 十分な車間がある場所を選ぶ:移る車線の後続車との車間が十分にあることを確認する
- 相対速度を意識する:移る車線の流れより明らかに遅い速度で入ると、相手にブレーキを踏ませる
- ウインカーを早めに出す:合図なしの突然の車線変更は、相手にとって恐怖でしかない
- ミラーと目視で後方確認:ミラーの死角に車がいないか確認してから動く
車線変更は日常的な操作ですが、相手にブレーキを踏ませるかどうかで、相手の受け取り方は大きく変わります。相手にブレーキを踏ませない車線変更を意識するだけで、トラブルの種はかなり減らせます。
周囲の流れに合った速度で走る
「自分は制限速度を守っているから正しい」という考え方自体は間違いではありません。制限速度を守ることは当然大事です。
ただし、周囲の流れから極端に外れた速度で走ると、結果的に他の車との摩擦が生まれやすくなるのも事実です。
たとえば、走行車線で流れが80km/h程度なのに60km/hで走っていると、後続車は追い越すために車線変更を繰り返すことになります。追い越す側にとっても手間がかかりますし、速度差が大きいほど追越時のリスクも上がる。
極端に遅い走行は、それ自体があおり運転のきっかけになることがあります。
もちろん、速い車に合わせて無理に飛ばす必要はまったくありません。大切なのは、走行車線の中で、周囲の流れから極端に外れない速度を選ぶこと。急いでいないときは走行車線で自分のペースを保ち、追越車線にはできるだけ出ない。
キープレフトを基本にして、自分の車と状況に合った速度で走る。これが結果的に、あおられにくい走り方にもつながります。
後方の車の存在を常に意識する
あおり運転を「されにくくする」ために大事なのが、後方の車を常に意識しておくことです。
前だけ見て走っていると、後ろから速い車が近づいてきていることに気づけません。気づいたときには、すでに相手は車間を詰めてきている、という状況になることがあります。
ルームミラーで後方を定期的にチェックする習慣を持つだけで、「後ろに速い車が来ているから、早めに走行車線に戻ろう」「後ろが詰まっているから、少しペースを上げて追越を終わらせよう」といった判断ができるようになります。
後ろの車に気づいて早めに対応できれば、相手がイライラする前に状況を解消できる。それだけで、あおり運転に発展するリスクは大幅に下がります。
追越車線を走っているときは特に意識したいポイントです。追い越しが終わったかどうかに関わらず、後方に速い車が来たら、安全なタイミングで走行車線に戻る。この対応が自然にできるようになると、高速道路でのストレスも減ります。
SA・PAや交差点での合流・進入にも気を配る
高速道路だけでなく、一般道でもあおり運転のきっかけになりやすい場面があります。
たとえば、交差点で右左折するときに合図が遅い、あるいは合図なしで急に曲がり始める。後続車にとっては「なんで急に減速したんだ」「曲がるなら早く合図出してくれ」という状態になります。
SA・PAに入るときも同じです。本線上で急に減速すると、後続車にブレーキを踏ませてしまい、ストレスのきっかけになりえます。
どちらも共通しているのは、「自分が次に何をするか」を、後続車にできるだけ早く伝えるということ。ウインカーを早めに出す、急な減速を避ける、減速車線に入ってから速度を落とす。
後続車を驚かせない運転をすることが、結果的にトラブルの予防になります。
それでもあおり運転に遭ってしまったら

ここまで「されにくくする走り方」を紹介してきましたが、どんなに気をつけていても、あおり運転に遭うことはあります。相手が最初から攻撃的な場合や、まったく理不尽な理由であおってくるケースも現実には少なくありません。
そんなとき大切なのは、相手にしないこと、トラブルを大きくしないことです。
ここからは、あおり運転に遭ったときのスマートな対処法をまとめます。
まず道を譲る。相手を先に行かせる
後方から車間を詰められたり、パッシングされたりしたら、安全なタイミングで走行車線に移って、先に行かせるのが最も確実な方法です。
「なんで自分が避けなきゃいけないんだ」と感じる気持ちはわかります。でも、ここで意地を張っても得することは何もない。相手と同じ土俵に立った瞬間に、トラブルはエスカレートします。
先に行かせてしまえば、それで終わりです。自分が安全でいられることが、何よりも大事。
絶対にやり返さない
あおられたことに腹が立って、急ブレーキを踏んでみたり、クラクションを鳴らしたり、追いかけてみたり。こうした「やり返し」は絶対にやってはいけません。
やり返した瞬間、自分もあおり運転の当事者になります。相手がさらにエスカレートする可能性もありますし、最悪の場合、事故や暴力につながるケースもあります。
あおり運転への最善の対応は「無反応」です。相手にしない。反応しない。先に行かせる。これに尽きます。
相手と目を合わせない
並走してきたり、前に回り込んで減速してきたりする場合でも、相手と目を合わせないようにします。目が合うと、相手は「自分に反応した」と受け取り、さらに行為がエスカレートすることがあります。
視線は前方に向けたまま、冷静に。相手がいなくなるまで、淡々と対応する。
停車を強要されたら、ドアを開けない・窓を開けない
前に回り込まれて無理やり停車させられた場合、絶対にドアを開けない、窓を開けない。車内にいる限り、物理的な接触は起きにくい。
相手が降りてきて、窓を叩いたり、怒鳴ったりしても、車内から出ない。ドアロックを確認して、窓は閉めたまま。相手が何を言っても応じない。
恐怖を感じるかもしれませんが、車の中にいれば安全です。焦ってドアを開けてしまうと、事態が一気に悪化する可能性があります。
110番通報する
あおり運転が続く場合、または停車を強要された場合は、110番に通報します。
「大げさかな」と思うかもしれませんが、あおり運転は立派な犯罪です。妨害運転罪として、最大で5年以下の懲役または100万円以下の罰金(高速道路上で停車させた場合はさらに重い)。警察に通報することは正しい対応です。
通報するときは、相手の車の特徴(色・車種・ナンバー)、走行している場所、自分の状況をできるだけ伝えます。同乗者がいれば、同乗者に通報を任せるのが安全です。
人がいる場所へ移動する
高速道路であればSA・PA、一般道であればコンビニやガソリンスタンドなど、人がいる場所、監視カメラがある場所に移動します。
人目のある場所に入ることで、相手が手を出しにくくなります。また、周囲に助けを求められる環境に身を置くことで、自分の安全を確保しやすくなります。
高速道路の路肩で停車するのは避けたい。路肩は後続車の追突リスクもありますし、人目がないため相手が行動をエスカレートさせやすい環境です。可能な限り、SA・PAまで移動してから停車しましょう。
ドライブレコーダーは「お守り」ではなく「証拠」
あおり運転対策として、ドライブレコーダーの装着は今やほぼ必須だと考えています。
ドライブレコーダーがあれば、あおり運転の状況を映像として記録できます。警察に通報する際にも、「いつ、どこで、どんなあおり運転を受けたか」を映像で示せることは、非常に大きな意味を持ちます。
おすすめは前後2カメラタイプ。前方だけでなく、後方からの接近や車間の詰め方も記録できるため、あおり運転の証拠としては前後の映像が揃っていることが重要です。
また、ドライブレコーダーのステッカーを車のリアに貼っておくことも、一定の抑止力になります。「この車は録画している」と相手に伝わるだけで、あおり行為を思いとどまるケースもあるでしょう。
ドライブレコーダーは「付けているから安心」というお守りではなく、万が一のときの「証拠」です。付けたうえで、されにくい走り方を意識する。この両輪が大切です。

「自分は正しい」より「自分は安全」を優先する
あおり運転の話になると、「自分は制限速度を守っているから正しい」「相手が100%悪い」という議論になりがちです。
それはその通りです。法律的にも道義的にも、あおる側が悪い。
でも、「正しい」ことと「安全」であることは、必ずしも一致しません。
自分が正しくても、相手が暴走すれば事故になる。自分が正しくても、トラブルに巻き込まれれば時間も精神も消耗する。
だからこそ、「自分は正しい」にこだわるよりも、「自分は安全」を優先したい。後続車が速ければ先に行かせる。追越車線にいて後ろが詰まっていれば、走行車線に戻る。あおられたら相手にしない。
これは「負けている」のではなく、「自分と同乗者の安全を守る判断」です。結果的に、それが一番スマートな対応だと思っています。
まとめ
あおり運転を「されにくくする」ための走り方:
- 追越車線を走り続けない。追越が終わったら走行車線に戻る
- 車線変更で相手にブレーキを踏ませない
- 周囲の流れに合った速度を選ぶ。極端に遅い走行は避ける
- 後方の車の存在を常にミラーで意識する
- 合図は早めに出し、急な減速で後続車を驚かせない
あおり運転に遭ってしまったときの対処法:
- 道を譲り、先に行かせる
- 絶対にやり返さない。反応しない
- 相手と目を合わせない
- 停車を強要されたら、ドアを開けない・窓を開けない
- 110番通報する
- SA・PA、コンビニなど人がいる場所に移動する
- ドライブレコーダーで記録を残す
あおり運転は100%相手が悪い。でも、自分の走り方で「されにくくする」ことはできるし、遭ってしまったときも「相手にしない」ことでトラブルを最小限に抑えられる。
「自分は正しい」より「自分は安全」を優先する。それが、あおり運転に対する一番スマートな向き合い方だと思います。
あおり運転からトラブルに発展したとき、頼りになるのは記録と保険です。ドラレコを付けたら、あわせて補償の中身も見ておくとバランスが取れます。確認する順番は自動車保険の見直し完全ガイド にまとめています。
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