ドライバーの眠気や脇見を検知して警報する「ドライバーモニタリングシステム(DMS)」の搭載が義務化されました。国土交通省が2026年9月30日に保安基準の改正を公布し、この装置に関する規定は2026年10月20日に施行されています。
「施行」と聞くと、今日からすべての車に必要になるように感じますが、そうではありません。実際に搭載が求められるのは、新型車で2031年9月、継続生産車で2033年9月からです。そして、今乗っている車に後付けする義務はありません。
私は2003年式のNB8Cロードスターに乗っているので、こういう義務化のニュースが出るたびに「古い車はどうなるのか」がまず気になります。結論から言うと、今回の改正で今の車に何かが求められることはありません。この記事では、国交省の発表資料をもとに、対象車・適用時期・警報が鳴る条件を整理します。
ドライバーモニタリング義務化はいつから?適用は2031年9月から
まず日付を整理します。2026年に起きたのは「ルールができた」ことで、「装置が必要になった」のはもっと先です。
| 日付 | 何が起きたか |
|---|---|
| 2026年9月30日 | 保安基準の改正を公布 |
| 2026年10月20日 | 眠気警報装置・脇見警報装置の規定が施行 |
| 2031年9月 | 新型車に搭載が義務化 |
| 2033年9月 | 継続生産車にも搭載が義務化 |
「新型車」と「継続生産車」の違い
- 新型車=2031年9月以降に新しく型式の認可を受けて発売されるモデル
- 継続生産車=それより前から作られていて、そのまま生産が続いているモデル
つまり2031年9月から2033年8月までは、「新車なのにDMSが付いていない車」も普通に売られているということです。全面的に搭載されるのは2033年9月以降に作られる車から、と考えておけばいいでしょう。
なぜ「施行」と「適用」がずれているのか
メーカーが車を開発し直す時間が必要だからです。カメラやセンサーを車内に組み込み、制御を作り込むには年単位の期間がかかります。基準を先に決めておき、適用までに猶予を置くのは、これまでの安全装置の義務化でも同じやり方でした。
10月20日という日付には理由があります。国連の自動車基準調和世界フォーラム(WP.29)で2026年3月に国際基準が成立し、その国際基準が発効する10月に合わせて国内基準に取り入れたためです。
今乗っている車は対象外|後付けの義務はない
いちばん気になるところだと思うので、はっきり書いておきます。
- 今乗っている車に、DMSを後付けする義務はない
- 義務化の対象は、適用日以降に新しく作られる車
- DMSが付いていない車も、これまでどおり乗り続けられるし、中古車として売り買いもできる
「後付けしないと車検に通らなくなるのでは」という心配も、今回の改正については不要です。装置の備え付けを求める基準は、作られた時期で対象が決まります。2031年以前に作られた車に、さかのぼって装置を求めるものではありません。
ただし「検査方法の変更」は古い車にも及ぶ
旧車に乗っている立場から、ひとつ補足しておきます。「装置の義務化」と「車検の検査方法の変更」は別物です。
今回のDMSのように「この装置を付けなさい」という基準は、新しく作られる車が対象です。一方、2026年8月に完全移行したヘッドライトのロービーム検査のように「車検でこう測ります」という検査方法の変更は、今走っている車にも関係します。私のNB8C(2003年式)も、ロービームで測られる側でした。
義務化のニュースを見たら、「装置の話か、検査の話か」を見分けると、自分の車に関係あるかどうかがすぐ判断できます。

対象になる車|軽自動車もトラックも含む
対象は自動車全般です。乗用車だけでなく、軽自動車、トラックやバスも含まれます。除外されるのは次の車です。
- 二輪自動車(バイク)、側車付二輪自動車(サイドカー)
- 三輪自動車
- カタピラやそりを持つ軽自動車
- 被牽引自動車(トレーラーなど、引っ張られる側の車両)
バイクは対象外です。私はXSR155にも乗っていますが、二輪については今回の改正で何も変わりません。
眠気警報装置・脇見警報装置とは?警報が鳴る条件
今回義務化されたのは、正確には「眠気警報装置」と「脇見警報装置」の2つです(保安基準第43条の11・第43条の12)。カメラなどで運転者の状態や視線を見張り、眠気や脇見を検知したら警報音などで知らせます。
国交省の資料に載っている国際基準(UN-R182・UN-R183)の主な要件は次のとおりです。
| 眠気警報装置(UN-R182) | 脇見警報装置(UN-R183) | |
|---|---|---|
| 作動する速度 | 時速70〜130km (この範囲から減速したときは、時速65km未満になるまで作動) | 時速20km以上 |
| 警報する条件 | 運転者の眠気が一定の水準に達したとき | 時速50km以上で手元を3.5秒見続けたとき 時速20km超〜50km未満で手元を6秒見続けたとき |
ここでいう「手元」は、運転者から見て前方左右55度以内で、下方30度より下の領域(窓の部分は除く)。ひざの上やセンターコンソールでスマホを見ている状態が、ちょうどこれにあたります。
3.5秒でどれくらい進むか
時速50kmは秒速約13.9m。3.5秒なら約49mです。時速100kmの高速道路なら、3.5秒で約97mになります。警報が鳴る時点で、すでにこれだけの距離を前を見ずに走っているということです。
高速道路では「時速の数字と同じメートル数」が車間距離の目安とよく言われ、時速100kmなら約100mです。目安の車間距離とほぼ同じ距離を、前を見ないまま走ってしまう時間と考えると、3.5秒は決して「短い猶予」ではありません。
警報が鳴らない場面もある|基準の範囲を知っておく
この表を見て私がいちばん気になったのは、眠気警報が時速70km以上でしか作動を求められていないことです。
国の基準が求めているのは上の範囲だけで、メーカーがそれ以外の範囲でも作動させる設計にしない限り、範囲外では警報が出ない場合があります。たとえば次のような場面です。
- 仕事帰りに、一般道を時速40〜60kmで走っているときの眠気
- 高速道路の渋滞で、ノロノロ運転を続けているときの眠気
- 時速20km以下の徐行中に、ナビやスマホに目を落としたとき
眠気でいえば、高速道路を淡々と走る場面には強く、一般道の帰り道には弱い基準だと読めます。眠くなりやすいのは、むしろ疲れて帰る夕方の一般道だったりします。
警報は「休憩の合図」ではなく「もう遅い」の合図
私は運転中にどれだけ周囲の情報を拾えているかを「運転の解像度」と呼んでいて、疲れているときは自分の解像度が下がっていると自覚することが大事だと考えています。
眠気警報は「眠気が一定の水準に達したとき」に鳴ります。裏を返せば、鳴った時点ですでに解像度はかなり落ちているということです。警報が鳴ってから休むのではなく、「少し眠いかも」と感じた段階でサービスエリアやパーキングエリア、道の駅に入る。DMSが付いた車に乗るようになっても、この順番は変わらないと思います。

これまでの義務化と同じパターン
「新型車から先に、継続生産車はあとから。既存の車に後付けは求めない」という流れは、これまでの安全装置の義務化と同じです。
| 装置 | 新型車 | 継続生産車 | 今の車への後付け |
|---|---|---|---|
| 衝突被害軽減ブレーキ(国産車) | 2021年11月 | 2025年12月 | 義務なし |
| ドライバーモニタリング(眠気・脇見警報) | 2031年9月 | 2033年9月 | 義務なし |
このほか、国産の新型AT車には2028年9月からペダル踏み間違い時加速抑制装置(ACPE)の搭載も義務化されます。ブレーキ、ペダル、そして運転者の状態と、「運転者の注意だけに頼らず、車側で防ぐ」装置が順番に標準になっていく流れです。

すでにDMSが付いている車もある
DMS自体は新しい技術ではありません。国内でも、スバルやマツダ、トヨタなどが一部の車種にすでに搭載しています。ヨーロッパでは日本より先に新車への搭載が義務になっています。
なので、「義務化されたから2031年まで待つ」必要はありません。次に車を買うとき、DMSが欲しいなら今の時点でも搭載車を選べます。カタログや装備表で「ドライバーモニター」「ドライバーモニタリングシステム」などの名前を探してみてください。名称はメーカーによって違います。
自分で後付けはできる?
義務ではありませんが、気になる人向けに、居眠りや脇見を検知して警告する後付けの機器は、運送会社向けなどを中心に販売されています。ただし、こうした市販品は今回の保安基準に適合した装置という位置づけではありません。付けたからといって「義務化対応の車」になるわけではないので、あくまで補助として考えるのが妥当です。
旧車乗りとしての受け止め方
NB8Cには、DMSどころか衝突被害軽減ブレーキも付いていません。私にとって、今回の義務化は「自分の車には関係ない話」です。
ただ、関係ないからこそ意識していることがあります。機械が見張ってくれない車に乗っている以上、眠気や脇見の管理は全部自分の仕事だということです。長距離に出る前は、車の点検と同じくらい自分の睡眠や体調も確認しておくべきだと考えています。走行会のように集中力を使い切ったあとの帰り道なら、なおさらです。
それに、2031年以降もしばらくは、DMSの付いていない車が道路の大半を占めます。周りの車が眠気や脇見で「解像度」を落としている可能性は、今後も当分なくならないということです。自分の車にDMSがあってもなくても、ふらついている車や車間を詰めてくる車からは距離を取る。この基本はしばらく変わりません。

よくある質問
2026年10月から車にDMSを付けないといけない?
いいえ。10月20日に施行されたのはルールそのもので、搭載が必要になるのは新型車で2031年9月、継続生産車で2033年9月からです。今乗っている車に後付けする義務はありません。
軽自動車も対象?
対象です。除外されるのは二輪自動車・側車付二輪自動車・三輪自動車・カタピラやそりを持つ軽自動車・被牽引自動車で、一般的な軽自動車は含まれます。
脇見警報はいつ鳴る?
基準では、時速50km以上で手元を3.5秒、時速20km超〜50km未満で手元を6秒見続けたときに警報することが求められています。作動するのは時速20km以上です。
DMSがない中古車を買っても大丈夫?
問題ありません。義務化の対象は適用日以降に作られる車なので、それ以前の車はDMSがなくても公道を走れますし、売買もできます。
まとめ
- 2026年10月20日に施行されたのは「ルール」。搭載義務は新型車が2031年9月、継続生産車が2033年9月から
- 今乗っている車に後付けする義務はない。DMSがない車も乗り続けられ、売買もできる
- 対象は軽自動車やトラックを含む自動車全般。バイクは対象外
- 眠気警報は時速70〜130km、脇見警報は時速20km以上で作動。時速50km以上なら手元を3.5秒見続けると警報
- 警報が鳴らない速度域もあるので、眠気は「警報の前に休む」が基本
DMSは、居眠りや脇見による事故を減らすための装置です。ただ、警報が鳴るのは「危なくなりかけたとき」で、事故を防ぐ最後の手前にすぎません。車がどれだけ見張ってくれるようになっても、眠いときに休む判断をするのは運転者自身です。
そして、どれだけ気をつけていても事故の可能性はゼロにはなりません。安全装置の有無にかかわらず、万一のときの補償が今の自分の車と乗り方に合っているかは、一度確認しておくと安心です。



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