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「対物賠償は無制限にしてあるから、相手の車は全部直せる」——そう思っている方は多いと思います。
ところが実際には、対物無制限でも相手の車が直らないことがあります。
それは、相手が年式の古い車に乗っていた場合です。
その不足分を埋めるのが対物超過修理費用特約です。保険料はごくわずかしか上がらないのに、付けているかどうかで事故後の揉め方がまるで変わります。
この記事では、この特約の仕組みと支払条件を整理したうえで、27年落ちのロードスターに乗っている私が「必ず付ける」と決めている理由を書きます。旧車や趣味車に乗っている方には、加害者側だけでなく被害者側としても読んでほしい内容です。
対物無制限でも修理費が足りない理由
対物賠償で支払われる上限は、相手の車の「時価額」までです。無制限という言葉から誤解されやすいのですが、正確には「時価額の範囲内で無制限」という意味になります。
時価額とは、その車の現在の市場価値のこと。年式が古くなるほど下がっていきます。
具体例で見てみます。追突してしまった相手の車の修理見積もりが80万円だったとします。
| 相手の車 | 時価額 | 対物賠償から出る額 | 結果 |
|---|---|---|---|
| 新車に近い | 250万円 | 80万円(満額) | 問題なく直せる |
| 年式の古い中古車 | 30万円 | 30万円まで | 50万円足りない |
修理費が時価額を超えると「経済的全損」として扱われ、時価額までしか支払われません。上の例だと50万円が不足します。
相手からすれば、何も悪くないのに車を壊されたうえに、直すには自腹で50万円を出すか、諦めて手放すかを迫られることになります。示談が揉める典型的なパターンです。
対物超過修理費用特約とは
この不足分を、一定額まで上乗せして支払ってくれるのが対物超過修理費用特約です。限度額は50万円が一般的で、チューリッヒのように無制限を選べる会社もあります。
やっかいなのが、保険会社によって名前が違うことです。同じ内容の特約なのに呼び方が変わるので、自分の証券を見るときは注意してください。
| 呼び方 | 採用している例 |
|---|---|
| 対物超過修理費用特約 | 多くの保険会社の一般的な名称 |
| 対物超過特約 | チューリッヒ、東京海上ダイレクト など |
| 対物全損時修理差額費用特約 | おとなの自動車保険、アクサダイレクト など |
自動でセットされている会社もあれば、自分で選んで付ける会社もあります。「付いているつもりだった」が一番危ないので、一度確認しておくことをおすすめします。
いくら支払われる?計算は「超過分 × 自分の過失割合」
ここは誤解されやすいところです。不足分がまるごと出るわけではありません。
支払額 =(修理費 − 時価額)× 自分の過失割合 ※上限50万円(1事故・1台につき)
先ほどの例(修理費80万円・時価額30万円・超過分50万円)で計算してみます。
| 自分の過失割合 | 特約から出る額 |
|---|---|
| 100%(追突など) | 50万円 |
| 70% | 35万円 |
| 50% | 25万円 |
自分の過失が小さいほど、この特約から出る額も小さくなります。逆に言えば、一方的に自分が悪い事故ほど効いてくる特約ということです。追突事故のように過失100%になりやすい事故を考えると、付けておく意味は大きいと思います。
注意点|実際に修理しないと支払われない
この特約には明確な条件があります。ここを知らないと「使えるはずだったのに使えなかった」ということになります。
- 相手が実際に修理することが条件。修理せずにお金だけ受け取ることはできない
- 修理の期限がある。事故の翌日から原則6か月以内(おとなの自動車保険のように1年以内としている会社もある)
- 全損として処理し、修理せずに買い替えた場合は対象外
- 支払われるのは1事故・1台につき上限まで
つまりこの特約は、相手が「その車をこれからも乗り続けたい」と考えている場合にだけ機能します。逆に言えば、そう思うような車に乗っている人が相手だったときに効く、ということです。
【実体験】旧車に乗っていると、この特約の重みがわかる
私はNB8Cロードスターに乗っています。1998年から2005年まで生産されたモデルで、走行距離も12万kmを超えています。中古車としての時価額は、正直に言ってかなり低い部類です。
ここで立場を逆にして考えてみてください。もし私がぶつけられる側だったら、どうなるか。
フェンダーとドアをやられて修理費が60万円かかるとします。しかし時価額は20万円程度と見積もられるでしょう。相手の対物賠償から出るのは20万円。40万円が足りません。
相手が対物超過修理費用特約を付けていれば、この不足分が埋まって修理できます。付けていなければ、自腹を切るか、愛車を諦めるかです。自分の車が直せるかどうかが、ぶつけてきた相手の契約内容次第で決まる——これが旧車・趣味車に乗るということの現実だと思っています。
市場価値が低いことと、オーナーにとっての価値が低いことは、まったく別の話です。長く乗ってきた車ほど手を入れていますし、同じ状態の個体を探すほうがよほど難しい。時価額20万円という数字は、その車を維持してきた時間を何も反映していません。
だから私は、自分が加害者になる可能性の側でも対物超過修理費用特約を必ず付けています。相手が大事に乗ってきた車かもしれない以上、こちらの契約が理由で直せないという事態は避けたい。保険料の上がり方はごくわずかで、外す理由が見つかりません。
ちなみに、自分の車を守る側の備えは車両保険の話になります。旧車の車両保険については古い車に車両保険は必要?修理費・時価額・趣味車で考えるで詳しく扱います。
対物超過修理費用特約は必要?判断基準
結論から言えば、基本的には付けておくべき特約だと考えています。理由は保険料に対する効果の大きさです。
| 付けておきたい人 | 優先度がやや下がる人 |
|---|---|
| 通勤・通学など走行距離が多い | 年に数回しか運転しない |
| 渋滞路や市街地を走ることが多い | — |
| 旧車・趣味車が多い地域を走る | — |
| 示談で揉めたくない | — |
正直なところ、「優先度が下がる人」を挙げるのが難しい特約です。年間の保険料アップは数百円から千円程度であることがほとんどで、外して浮く金額と、事故のときに埋められる50万円の差があまりに大きい。
保険料を下げたいなら、車両保険の条件や免責金額を見直すほうが効果があります。車両保険はいらない?必要な人・外してもいい人の判断基準のほうを先に検討してください。数百円のためにこの特約を外すのは、削る場所を間違えていると思います。
まとめ
- 対物無制限でも、支払われるのは相手の車の時価額まで。古い車が相手だと修理費が足りなくなる
- その不足分を50万円まで埋めるのが対物超過修理費用特約(無制限を選べる会社もある)
- 計算は(修理費 − 時価額)× 自分の過失割合。過失100%の事故ほど効く
- 相手が実際に修理することが条件で、原則6か月以内。買い替えた場合は対象外
- 会社によって「対物全損時修理差額費用特約」など名前が違うので証券を確認する
- 年数百円〜千円程度。ここを削るのは節約の順番として間違い
付帯の有無や名称、限度額の選択肢は会社によって差があります。自分の契約に付いているかどうか確認したうえで、次の更新のときに条件を比べてみてください。
保険料は「同じ補償」でも会社によって変わる
対物超過修理費用特約を付けたうえでも、会社によって保険料はかなり変わります。満期が近い方は、補償を削らずに保険料だけ下げられないか一度比較してみると、差がはっきりします。見積もり後に営業電話がかかってこないので、気軽に使えます。
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