あいおいニッセイ同和損保が2026年10月20日、全国の道路冠水の危険箇所を地図で確認できる「そなえる冠水マップ」を公開しました。全国47都道府県・4,577か所の道路冠水想定箇所が載っていて、無料・登録不要で誰でも使えます。
アンダーパスのように周囲より低い道路は、短時間の大雨でもあっという間に水がたまります。危険な場所を雨が降る前に知っておけるという意味で、ドライバーにとって使い道の多いツールです。
ただ、マップはあくまで「冠水しやすい場所」を教えてくれるもので、目の前の冠水路を通れるかどうかまでは教えてくれません。この記事では、マップの使い方に加えて、冠水した道路に入ってはいけない理由と、万一車が冠水・水没したときの対応まで、JAFと国土交通省の資料をもとにまとめます。
「そなえる冠水マップ」とは?全国4,577か所の冠水想定箇所を無料公開
あいおいニッセイ同和損保のニュースリリースと公式解説ページから、要点を整理します。
- 公開日:2026年10月20日
- 料金・登録:無料・利用者登録なし。PC・スマホ・タブレットのブラウザで見られる
- 対象:国土交通省の各地方整備局と北海道開発局が公表している道路冠水想定箇所のうち、全国47都道府県の4,577か所(2026年10月時点)
- 危険度:国土地理院「ハザードマップポータルサイト」の浸水想定と照合し、想定浸水深に応じて4段階で表示
- 雨雲との重ね表示:気象庁の高解像度降水ナウキャストを地図に重ねて、今の雨雲の位置と冠水想定箇所をあわせて確認できる
- ランキング:同社のテレマティクス自動車保険の走行データ(個人が特定されない形で統計化したもの)から、交通量の多い地点を上位に表示
報道によると、2026年8月の千葉県の豪雨で冠水による車の立ち往生が多発し、アンダーパスなどの危険箇所が十分に知られていなかったことが開発の背景にあるそうです。
マップ・アプリ・運転中の3つの機能
今回の発表は、マップ単体ではなく3つの機能のセットです。
| そなえる冠水マップ | cmapアプリ(豪雨アラート) | 「タフ・見守るクルマの保険NexT」専用アプリ | |
|---|---|---|---|
| 使う場面 | 平時・大雨・豪雨時 | 大雨・豪雨時(運転していないとき) | 大雨・豪雨時(運転中) |
| 提供開始 | 2026年10月20日 | 2026年10月20日 | 2026年10月中 |
| 内容 | 冠水想定箇所を地図で表示 | 大雨・豪雨が予測されると最大60分前に通知し、通知からマップへ案内 | 走行ルート上や進行方向の冠水注意地点をアイコンと音声で知らせる |
| 使える人 | 誰でも(無料・登録不要) | 「被害予測・防災cmap」アプリを入れた人(無料) | 同保険の契約者のみ |
契約者でなくても、マップとcmapアプリは無料で使えます。運転中の音声案内だけが契約者向けです。
そなえる冠水マップの使い方
マップはブラウザで開くだけで使えます。URLは公式解説ページに載っている次のアドレスです。
▶ そなえる冠水マップ(あいおいニッセイ同和損保)
実際に開いてみると、最初は日本全体の地図に地域ごとの箇所数が丸で表示され、画面には「全国:4,577箇所」と出ます。
① 地域を選ぶ
「現在地」を選ぶとスマホのGPSで周辺を表示し、「地域」を選ぶと地方→都道府県→市区町村の順に絞り込めます。選んだ地域の地点マーカーと、危険箇所のランキングが表示されます。
② 凡例で「対策優先度」を見る
各地点は、洪水・内水氾濫のハザードマップに示された想定浸水深をもとに、4段階に分けられています。
| 対策優先度 | 想定浸水深 | 想定される影響 |
|---|---|---|
| 最優先 | 3m以上 | 車両が完全に水没する水準 |
| 優先度高 | 0.5m以上3m未満 | 車両の走行が困難・不能になる水準 |
| 優先度中 | 0.5m未満 | 車両の故障につながる可能性がある水準 |
| 区域外 | 浸水想定区域外 | 車両の故障につながる可能性が低い |
注意したいのは「区域外」の扱いです。公式ページでも、区域外は浸水リスクがないという意味ではなく、局地的な豪雨や排水能力を超える雨で浸水する可能性があると明記されています。「優先度中」でも、0.5m近い水があれば車は簡単に故障します。マーカーの色が薄いから安心、とは考えないほうがいいです。
③ 「洪水」と「内水」のレイヤーを切り替える
浸水の種類を2つに分けて見られます。
- 洪水浸水想定(外水)=川があふれたときにどこまで浸かるか。河川沿いで、深く広く浸水する
- 内水浸水想定=大雨で下水道や排水路が処理しきれず、街に水がたまる場合。低地や都市部で、短時間の豪雨で突然起きる
車で怖いのは、むしろ内水のほうだと思います。川があふれていなくても、数十センチの地形のくぼみに水がたまる。普段は何も感じない道のへこみが、ゲリラ豪雨のときだけ危険箇所に変わるわけです。よく通る道に内水の想定がないかは、一度見ておく価値があります。
④ 大雨のときは「今危ない箇所判定」
気象庁の高解像度降水ナウキャストから、25分前〜1時間先の雨雲の動きを地図上に表示できます。そのうえで、雨の予測と地点の危険度を組み合わせて、危ない地点を3段階でリスト表示します。
| 判定 | 主な基準 |
|---|---|
| 緊急 | 「最優先」の地点で、1時間30mm以上の雨が予測される |
| 警戒 | 「最優先」の地点で1時間20mm以上、または「優先度高」の地点で1時間30mm以上の雨が予測される |
| 注意 | 1時間20mm以上の雨が予測される地点など(「最優先」「優先度高」の地点は1時間10mm以上から) |
この「緊急・警戒・注意」は、あくまで同社独自の基準による判定です。実際に水がたまっているかどうかを測っているわけではありません。
⑤ ランキングと詳細(ストリートビュー・箇所表PDF)
ランキングは「範囲順」(危険度→交通量の順)と、現在地を選んだときだけ使える「近い順」から選べます。地点マーカーを押すと、ストリートビューと箇所表PDFが見られます。
個人的にいちばん使えると思ったのはストリートビューです。地図上の点だけだと覚えられませんが、「あの高架の下の、あの下り坂か」と景色で覚えておけば、雨の日に近づいたときに思い出せます。
平時にやっておきたいこと
- 自宅・職場・よく行く店のまわりに「最優先」「優先度高」の地点がないか確認する
- 大雨のときに、その地点を通らずに帰れる迂回ルートを1本決めておく
- 離れて暮らす家族の住む地域も見ておき、必要なら箇所表PDFを印刷して渡す
マップは「通れるかどうか」を教えてくれない
ここは強調しておきたいところです。あいおいニッセイ同和損保自身が、このサービスは冠水リスクの把握を支援する参考情報であり、実際の冠水状況や通行できるかどうか、通行の安全性を保証するものではないと明記しています。
- マップに載っていない場所でも冠水は起きる(4,577か所は国が公表している想定箇所)
- 「今危ない箇所判定」は雨の予測にもとづく判定で、リアルタイムの水位ではない
- 大雨のときは、自治体・気象庁・道路管理者が出す最新の情報を確認し、危険を感じたら通らない
- 運転中にスマホを操作しない。確認するなら安全な場所に停めてから
マップは「雨が降る前に、危ない場所を頭に入れておく」ための道具です。現場での判断はいつも「目の前が冠水していたら入らない」。これに尽きます。
冠水した道路に進入してはいけない理由
水深は見た目では分からない
JAFは、実際の冠水路は水が濁っていることが多く、見た目で水深を判断するのは困難だと注意しています。さらに、マンホールのふたが外れた穴や、見えない側溝が隠れていることもあります。浅く見えても、入った先で急に深くなるのがアンダーパスの怖さです。
水深が床面を超えたら危険、ドアの半分でほぼ開かない
国土交通省は2019年(令和元年)に、国内の乗用車メーカー8社への調査をもとに、次のように公表しています。
- 水深が車の床面を超えると、エンジンや電気装置に不具合が出るおそれがあり、最悪の場合はエンジンやモーターが止まって動けなくなる
- 水深がドアの下端にかかると、外からの水圧で内側からドアを開けるのが難しくなる
- ドアの高さの半分を超えると、内側からはほぼ開けられなくなる
つまり、「車が止まる」と「車から出られない」が、ほぼ同じくらいの水深で起きるということです。止まってから考えるのでは間に合いません。
JAFのテストでは、走り切れても車内に水が入った
JAFは2024年10月、電気自動車(BEV)・ハイブリッド車(HV)・ガソリン車(軽自動車)の3台で冠水路走行テストを行っています。結果の一部を抜き出します。
| 水深・速度 | 結果 |
|---|---|
| 30cm・10km/h | 3台とも走り切れた |
| 30cm・30km/h | 3台とも走り切れたが、ボンネット内に水が入った(ガソリン車は車内にも浸水) |
| 60cm・30km/h | 3台とも走り切れたが、BEVは複数の警告灯が点灯、HVとガソリン車はエアクリーナーが完全に濡れた |
| 60cm・40km/h | ガソリン車は28.5m地点で停止。HVは走り切った後にエンジンが停止。BEVは複数の警告灯が点灯 |
「走り切れた」と書かれていても、その多くはボンネット内や車内に水が入った状態です。テストは試験場のコースで、プロのスタントマンが条件をそろえて運転しています。濁っていて深さも分からない本物の冠水路では、もっと条件は悪くなります。
「冠水に強い車」はない
車高の高いSUVなら大丈夫、エンジンのない電気自動車なら止まらない、と考えがちですが、JAFは「BEVなら安全」と安易に冠水路に入るのは危険だと結論づけています。BEVはモーターこそ止まりませんでしたが、システムの警告が複数出ていました。速度が上がるほど水を巻き上げ、エンジンルームに水が入りやすくなるのは、どの車でも同じです。
私の趣味車のNB8Cロードスターは、言うまでもなく車高の低い車です。床面が低いぶん、国交省のいう「床面を超えたら危険」のラインにも早く届きます。普段使いの軽バンでも事情は同じです。どの車に乗っていても、冠水路の前で取れる選択肢は「引き返す」か「迂回する」しかないと考えています。
もし冠水路で動けなくなったら|車からの脱出手順
国土交通省が示している脱出手順は次の4段階です。
- 水位が低いうちに、ドアを開けて脱出する
- 水圧などでドアが開かなければ、窓を開けて脱出する
- ドアも窓も開かなければ、脱出用ハンマーで窓を割って脱出する
- それでも出られなくてもあきらめない。車内に水が入って内外の水位が同じくらいになると、ドアが開く可能性が高まる
JAFの水没テストでも、少しずつ水位が上がった場合はドアを開けて出られた一方、水位がドアノブ付近(80cm前後)になると窓やドアが開きにくくなるとして、動けなくなったら車内にとどまらず早めに脱出するよう呼びかけています。転落を想定したミニバンのテストでは、車内外の水位差で強い水圧がかかり、ドアもスライドドアも開かず、窓を割って脱出しています。
脱出用ハンマーは運転席から届く場所に
車の窓ガラスは、専用の道具なしではまず割れません。国土交通省は、3千円未満で買える脱出用ハンマーを1台に1本備えるよう呼びかけています。選ぶときは、JISマークやGSマークなど性能を示す表示のある製品か、販売店が勧める製品を選ぶように、とのことです。
もうひとつ大事なのが、「合わせガラス」は脱出用ハンマーでも割れないことです。フロントガラスは合わせガラスで、車種によってはドアガラスやリアガラスにも使われています。自分の車のどの窓なら割れるのかは、購入時に販売店で確認しておきましょう。

車が冠水・水没したあとの対応|エンジンをかけない
命が助かったあと、または駐車中に車が浸水してしまったときの対応です。JAFと国土交通省の注意喚起から、やってはいけないこととやるべきことをまとめます。
- エンジンをかけない(キーを回さない、スタートボタンを押さない)。水が引いて見た目に問題がなくても同じ
- キーをオフにしていても、バッテリーがつながっていれば電気は流れ続けていて、漏電による火災のおそれがある
- ボンネット内まで水に浸かっていたら、バッテリーのマイナス端子を外し、外した端子がバッテリーに触れないようテープなどで絶縁する
- ハイブリッド車・電気自動車は高電圧の部品があるので、むやみに触らない
- 海水をかぶった車は、塩分で配線がショートして発火した事例がある。水が引いたあとも腐食が進む
- 運転できそうでも、販売店や整備工場で点検を受けるまで乗らない
動かす必要があるときは、販売店やロードサービスに連絡して運んでもらいます。ここで知っておきたいのが、大雨や台風による冠水・スタックは、保険付帯のロードサービスでは対象外にしている保険会社があることです。JAFは自然災害による故障にも対応しています。自分の保険のロードサービスがどこまで対応するかは、雨の季節の前に確認しておくと安心です。

冠水被害は車両保険で補償される?
冠水で自分の車が壊れたときに頼れるのは車両保険です。
- 台風・洪水・高潮による損害は、一般型だけでなくエコノミー型(車対車+限定Aなど)でも補償対象に含まれることが多い
- 地震・噴火・津波による損害は対象外。備えるには専用の特約が必要
- 台風・洪水で車両保険を使うと、一般的に1等級ダウン事故として扱われ、翌年の等級が1つ下がる
- 車両保険を付けていなければ、修理費も買い替え費用も全額自己負担
補償の範囲は保険会社や契約によって違うので、最終的には自分の証券と約款で確認してください。
私が冠水マップを見ていて思ったのは、車両保険を付けるかどうかを考えるときに、このマップは判断材料になるということです。自宅の駐車場や毎日の通勤路のすぐ近くに「最優先」「優先度高」の地点があるなら、事故を起こさない自信があっても、水害で車を失うリスクは運転のうまさと関係なく残ります。

水没した車は電装系が全滅して全損扱いになることも珍しくありません。全損になったときの保険金の仕組みや、その後の動き方はこちらにまとめています。

よくある質問
冠水路は水深何cmまでなら大丈夫?
「ここまでなら安全」という水深はありません。国土交通省は、水深が床面を超えると不具合が出るおそれがあるとしています。JAFのテストでは水深30cmでも速度によっては車内やボンネット内に水が入りました。そもそも実際の冠水路は深さが見えないので、入らずに迂回するのが原則です。
そなえる冠水マップは無料?登録は必要?
無料で、利用者登録も不要です。あいおいニッセイ同和損保の契約者でなくても使えます。運転中の音声案内だけは、同社の「タフ・見守るクルマの保険NexT」の契約者向けの機能です。
リアルタイムの冠水状況は分かる?
分かりません。マップは冠水が想定される箇所を示すもので、「今危ない箇所判定」も雨雲の予測にもとづく判定です。実際の水位や通行できるかどうかは、自治体・気象庁・道路管理者の情報と現地の状況で判断してください。
冠水した車はエンジンをかけて確認していい?
かけてはいけません。漏電による火災のおそれがあります。販売店や整備工場、ロードサービスに連絡して点検を受けてください。
まとめ
- 「そなえる冠水マップ」は全国4,577か所の道路冠水想定箇所を、無料・登録不要で確認できる
- 危険度は想定浸水深による4段階。「区域外」でも浸水しないとは限らない
- 大雨のときは雨雲を重ねた「今危ない箇所判定」が使える。ただし通行できるかどうかは保証しない
- 冠水路には入らない。水深は見えず、床面を超えると車が止まり、ドアの半分で内側からほぼ開かなくなる
- 閉じ込められたら、ドア→窓→脱出用ハンマーの順。ハンマーは運転席から届く場所に
- 冠水した車はエンジンをかけない。補償は車両保険で、台風・洪水ならエコノミー型でも対象のことが多い
冠水マップのいちばんの使い道は、雨が降っていない今日のうちに、自分の生活圏の危険箇所を一度だけ見ておくことだと思います。5分あれば終わります。その5分が、豪雨の日に「あそこは通らない」という判断を、迷わずできるかどうかを分けます。
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