高速道路の逆走は、全国でおおむね2日に1回起きています。自分が気をつけていても、向こうから逆走車が来ることは防げません。
2026年10月22日には、NEXCO中日本が東海北陸自動車道の郡上八幡ICと美並ICに、逆走車に物理的な衝撃を与えて気づかせる新しい装置を設置すると発表しました。対策は年々強化されていますが、ドライバー側が「遭遇したらどうするか」を知っておくことも欠かせません。
この記事では、NEXCO中日本が公開している逆走のデータと呼びかけをもとに、逆走車に遭遇したときの対処法、逆走車が追越車線を走ってくる理由、自分が逆走してしまったときの行動、そして新しい逆走防止装置の仕組みまでまとめます。
高速道路の逆走はどれくらい起きている?
NEXCO中日本の「無くそう逆走」のページには、国土交通省と高速道路会社が警察の協力を得てまとめたデータが載っています。2024年の数字を中心に整理します。
| 項目 | データ |
|---|---|
| 逆走の発生頻度 | 全国の高速道路でおおむね2日に1回 |
| 2024年の逆走事案 | 220件(事故または確保に至ったもの) |
| 2024年の逆走事故 | 50件(死亡4件・負傷10件・物損36件) |
| 逆走事故の危険度 | 死亡事故になる割合が、高速道路の事故全体の約38倍。死傷事故になる割合は約4倍 |
| 逆走した運転者の年齢(2024年) | 65歳以上が約7割(うち75歳以上が49%)。30〜65歳未満も23% |
件数としては事故に至らないケースがほとんどですが、いったん事故になると正面衝突になりやすく、死亡事故の割合が桁違いに高い。これが逆走のいちばん怖いところです。
逆走が始まる場所
2024年の220件を、逆走を始めた地点で分けると次のとおりです。
- 分合流部・出入口部:91件(41%)
- 料金所の前後:53件(24%)
- 料金所のプラザ部:17件(8%)
- 単路部(ICなどがない本線の途中):36件(16%)
- その他:23件(11%)
インターチェンジやジャンクション、料金所のまわりで7割以上が始まっています。道を間違えたと気づいた場所、あるいは間違えやすい場所で起きているということです。
逆走の原因|「わざと」より「気づいていない」が多い
動機別に見ると、2015〜2023年のデータで故意が約2割、過失が約4割、認識なしが約3割。2024年も同じ傾向です。
- 故意:逆走になると分かっていて始めたもの(例:降りるICを通り過ぎ、戻ろうとして逆走)
- 過失:逆走になると思わずに始めたもの(例:高速道路に誤って入ったことに気づき、料金所手前で転回して、そのまま反対車線の入口ランプを逆走)
- 認識なし:事故や確保で止まった時点でも、逆走していたと分かっていないもの(認知症など)
つまり、逆走車の運転者の多くは、自分が逆走しているとは思っていないということです。この点が、次に説明する「逆走車がどの車線を走ってくるか」に関わってきます。
逆走車に遭遇したら|NEXCOが呼びかける3つの行動
NEXCO中日本・NEXCO東日本は、逆走車を見かけたとき・逆走車情報を見聞きしたときの行動として、次の3つを呼びかけています。
- 逆走車情報を見聞きしたら、速度を落とし、十分な車間距離をとって走る
- 逆走車を前方に見つけたら、衝突を避けるよう注意して走る
- 同乗者からの110番か、サービスエリアなどの非常電話、料金所スタッフに知らせる
通報があると、道路情報板やハイウェイラジオですぐに逆走車の情報が流されます。後ろから来る人を守るためにも、通報は大切です。
速度を落とすのは「よける時間」をつくるため
正面から来る車とは、自分の速度と相手の速度を足した速さで距離が縮まります。お互い時速100kmなら、1秒で約56m近づく計算です。こちらが速度を落とせば、そのぶん気づいてからよけるまでの時間が増えます。車間距離を空けておけば、前の車が急に避けたり止まったりしても、追突せずに済みます。
2024年に伊勢湾岸道の飛島ICで起きた逆走の映像をNEXCO中日本が公開したときも、逆走車に気づいたトラックがパッシングとハザードで周りに知らせながら減速し、付近の車もハザードで異常を伝え合って、衝突は避けられたと報じられています。減速とハザードで後ろに知らせるのは、自分の身を守るうえでも有効です。
運転しながら自分で110番しない
NEXCOの呼びかけが「同乗者からの110番」になっているのには意味があります。高速道路を走りながらスマホを操作するのは、それ自体が危険です。ひとりで運転しているときは、サービスエリアやパーキングエリアに入ってから通報するか、非常電話を使う。ハンズフリーでも、まずは安全に走ることを優先してください。
逆走車は追越車線を走ってくる|その理由
NEXCO中日本・NEXCO東日本はともに、逆走車は追越車線を走行してくる傾向があると注意を呼びかけています。
理由は、先ほどのデータを思い出すと分かりやすいと思います。逆走の約7割は「過失」か「認識なし」、つまり本人は自分が正しい向きに走っているつもりです。日本は左側通行なので、正しく走っているつもりの運転者は、ふだんどおり自分から見て左側の車線を走ります。
ところが、逆向きに走っている車の「左側」は、正しい向きに走っている私たちから見ると右側、つまり追越車線です。逆走車が追越車線にいるのは、無謀だからではなく、本人にとっては「いつもの車線」だからだと考えられます。
先ほどの飛島ICの例でも、出口ランプから本線に入った逆走車は「左の車線」を走っていきました。一般の車から見れば、そこは追越車線です。
だから「追越車線に居続けない」が身を守る
逆走車がいちばん来やすい車線が追越車線なら、追越車線にいる時間が短いほど、正面から鉢合わせする確率は下がります。追い越しが終わったら左の車線に戻る。高速道路の基本ルールそのものが、逆走対策にもなっているわけです。
私は高速道路では基本的に第一通行帯(いちばん左の車線)を走り、追越車線は追い越すときだけ使うようにしています。理由はあおり運転を招かないためと、周りを確認する余裕を持つためでしたが、逆走のデータを見てからは、もうひとつ大事な理由が増えたと感じています。

自分が逆走してしまったら|その場で止まって避難する
逆走の運転者の3割近くは65歳未満です。誰にでも起こりうることとして、自分が逆走してしまったときの行動も知っておきましょう。NEXCOの呼びかけは次の4つです。
- 気づく:中央分離帯が自分の左側にあり、標識が裏側しか見えないなら、逆走している可能性がある
- 止まる:近くの安全な場所に停車し、ハザードランプをつける
- 避難する:ガードレールの外側など、安全な場所に避難する
- 通報する:110番か非常電話で知らせる
ポイントは、自分でUターンして正しい向きに戻ろうとしないことです。高速道路の本線でのUターンは、後ろから来る車の前に横向きで飛び出すことになります。止まって、車から離れて、知らせる。あとは警察や道路会社に任せるのがいちばん安全です。
逆走(通行区分違反)は違反点数2点・反則金9,000円(普通車)ですが、点数や反則金以前に、正面衝突は自分も相手も命に関わります。
そもそも逆走しないために|出口を通り過ぎても戻らない
故意の逆走の典型が、「降りるはずのICを通り過ぎたので、戻ろうとした」というものです。でも、戻る必要はありません。
NEXCO中日本は、目的の出口を通り過ぎた場合は次のインターチェンジの一般レーンで料金所スタッフに申し出るよう案内しています(一部の道路・料金所では対応できません)。条件を満たせば、追加の料金を払わずに戻れる「特別転回」という仕組みもあります。
「間違えても、そのまま進んで係員に言えばいい」と知っているだけで、とっさのUターンやバックはかなり防げると思います。

新しい逆走防止装置|郡上八幡ICと美並IC
ここからは、2026年10月22日にNEXCO中日本名古屋支社が発表した新しい対策です。東海北陸自動車道(E41)の2つのICに、逆走車に物理的な衝撃を与えて気づかせる装置を、同社管内の高速道路で初めて設置します。
| 設置場所 | 装置 | 設置開始予定 |
|---|---|---|
| 郡上八幡IC | 路面埋込型ブレード | 2026年11月中旬 |
| 美並IC | ウェッジハンプ | 2026年12月上旬 |
どちらのICも、一般道との平面交差部で、本来進むべき方向とは反対方向へ誤って左折し、そのまま逆走してしまうケースを想定した対策です。
路面埋込型ブレード
路面に埋め込んだ突起物(ブレード)で、逆走車に衝撃を与えて注意を促す装置です。
- 逆走した場合:ブレードが倒れず、乗り越えるときに車に大きな衝撃が伝わる
- 正しい向きに走った場合:ブレードが回転して沈み込むので、走行に支障はない
中国自動車道の東城IC(管理用道路)で試験設置が行われていたものです。
ウェッジハンプ
舗装面にくさび(ウェッジ)型の、前後で形の違う段差(ハンプ)を設ける装置です。
- 逆走した場合:走行時の衝撃や音で警告する
- 正しい向きに走った場合:スムーズに走れて、走行に支障はない
東名高速の日本平PA(下り)にはすでに設置例がありますが、休憩施設の駐車場以外の場所に設置するのは、美並ICが同社管内で初めてです。
視覚的な対策も強化、工事はICの夜間閉鎖で
物理的な装置とあわせて、「プレッシャーウォール」や「リバーシブル注意喚起板」を使った目で見て気づかせる対策も強化されます。設置工事は、どちらもICの夜間閉鎖で行われる予定です。東海北陸道を夜に使う人は、NEXCO中日本の閉鎖のお知らせを確認しておくと安心です。
この2つのICは、NEXCO中日本が「重点対策箇所」に選んでいる場所です。重点対策箇所とは、統一的な対策をしたあとも重大事故が起きている箇所や、同じ施設で複数回逆走が起きている箇所、平面交差の構造がある箇所を指します。
個人的には、注意を「呼びかける」対策から、体で「感じさせる」対策に一歩進んだことに意味があると思っています。逆走の3割は本人に自覚がありません。看板や矢印が目に入らない人にも、ハンドルやお尻に伝わる衝撃なら届く可能性があります。
逆走車との事故に巻き込まれたら|保険で備えておきたいこと
逆走車との事故は正面衝突になりやすく、けがが重くなりがちです。万一巻き込まれたときに困らないよう、2つ確認しておきたい補償があります。
- 人身傷害補償:過失割合の決着を待たずに、自分や同乗者のけがの補償を受けられる
- 弁護士費用特約:自分に過失がない「もらい事故」では、自分の保険会社が相手と示談交渉できない。そのときに弁護士に頼む費用を補償してくれる
正しく走っていて逆走車にぶつけられたなら、こちらの過失はないと判断されることが多いはずです。ところが、過失ゼロのときほど、自分の保険会社は交渉に出てこられない。これは意外と知られていません。

よくある質問
逆走車情報はどこで分かる?
通報を受けると、高速道路の道路情報板やハイウェイラジオで逆走車の情報が流されます。情報を見聞きしたら、速度を落として車間距離をとり、とくに追越車線に注意してください。
一般道で逆走車を見つけたら?
考え方は同じです。速度を落として距離をとり、衝突を避けることを優先します。通報は、安全な場所に停車してから110番してください。
逆走していると気づいたら、Uターンして戻っていい?
いけません。近くの安全な場所に停車してハザードランプをつけ、ガードレールの外側などに避難してから、110番か非常電話で通報してください。
高速道路の逆走は高齢者だけの問題?
2024年の逆走事案では65歳以上が約7割ですが、30〜65歳未満も23%、30歳未満も6%います。出口を通り過ぎて戻ろうとする「故意」の逆走は、年齢に関係なく起こりえます。
まとめ
- 逆走は全国で2日に1回。事故になると死亡事故の割合は高速道路の事故全体の約38倍
- 遭遇したら、減速して車間距離をとり、衝突を避ける。通報は同乗者の110番か、非常電話・料金所で
- 逆走車は追越車線を走ってくる傾向がある。本人は「いつもの左側の車線」を走っているつもりだから
- 追越車線に居続けないことが、そのまま逆走対策になる
- 自分が逆走したら、Uターンせずに停車・避難・通報
- 郡上八幡ICに路面埋込型ブレード(11月中旬〜)、美並ICにウェッジハンプ(12月上旬〜)が設置される
新しい装置が増えても、全国のすべてのICに行き渡るにはまだ時間がかかります。それまでは、追越車線は追い越しのときだけ使う、逆走車情報が出たらすぐ減速する。この2つを習慣にしておくのが、いちばん確実な自衛策だと思います。
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