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対人賠償保険が「事故の相手にケガをさせたり、死亡させてしまったときの補償」だということは、多くの方がご存じだと思います。
ただ、こう聞かれると答えに詰まる方が多いのではないでしょうか。「助手席に乗せていた友人がケガをしたら、対人賠償は使えるのか?」——さらに言えば、それが妻や子どもだったら? 弟だったら?
実はここには明確な線引きがあり、同じ「同乗者」でも、対人賠償が使える人と使えない人がいます。そして使えない相手をカバーするのが人身傷害保険です。この関係を理解していないと、補償を削るときに一番危ないところを削ってしまいます。
この記事では、対人賠償の補償範囲と「他人」の定義、人身傷害・搭乗者傷害との役割分担を整理します。あわせて、20等級・ゴールド免許を維持している私が、それでも対人賠償を無制限から動かさない理由も書きます。
対人賠償保険とは|自賠責では足りない部分を埋める補償
対人賠償保険は、事故で他人にケガをさせたり死亡させてしまった場合に、自賠責保険の限度額を超える部分を補償する任意保険です。
「自賠責に入っているから大丈夫では」と考える方もいますが、自賠責の限度額を見ると、その考えが危ういことがわかります。
| 損害の区分 | 自賠責保険の限度額(被害者1名あたり) |
|---|---|
| 傷害(ケガ) | 120万円 |
| 後遺障害(常時介護を要する場合) | 4,000万円 |
| 後遺障害(随時介護を要する場合) | 3,000万円 |
| 後遺障害(上記以外) | 第1級3,000万円 〜 第14級75万円 |
| 死亡 | 3,000万円 |
注目すべきはケガの120万円です。ここを「治療費が120万円まで出る」と誤解している方が少なくありません。
実際には、この120万円には治療費・通院の交通費・休業損害・慰謝料がすべて含まれます。相手が骨折して入院し、仕事を数か月休んだ——このくらいの事故でも簡単に超えます。超えた分は、任意保険に入っていなければ全額が自己負担です。
なぜ「無制限」が前提なのか|実際の賠償額
死亡や重度の後遺障害では、賠償額が自賠責の3,000万円をはるかに超えます。損保ジャパンが公表している高額賠償事案の判例では、次のような金額が認定されています。
| 認定損害額 | 被害者 | 態様 |
|---|---|---|
| 約5億2,800万円 | 男性41歳・医師 | 死亡 |
| 約3億9,700万円 | 男性21歳・大学生 | 後遺障害 |
| 約3億8,200万円 | 男性29歳・会社員 | 後遺障害 |
| 約3億7,800万円 | 男性23歳・会社員 | 後遺障害 |
| 約3億6,700万円 | 男性38歳・医師 | 死亡 |
金額が跳ね上がるのは、被害者が若い・収入が高い・介護が必要な期間が長いといった条件が重なったときです。相手を選んで事故を起こすことはできない以上、上限を決めて契約する意味はほとんどありません。
そして現実的な話として、対人賠償を1億円にしても無制限にしても、保険料はほとんど変わりません。会社によっては無制限しか選べないこともあります。ここを削って浮くお金は、リスクに全く見合いません。
同乗者に対人賠償は使える?「他人」の線引き
ここがこの記事の本題です。対人賠償は「他人」に対する補償なので、誰が「他人」に当たるのかで結論が変わります。
多くの保険会社の約款では、対人賠償を支払わない相手として「記名被保険者」「被保険自動車を運転中の者またはその父母・配偶者・子」「被保険者の父母・配偶者・子」が挙げられています。裏を返すと、それ以外は「他人」です。
| 同乗していた人 | 対人賠償 | 備考 |
|---|---|---|
| 友人・知人・恋人 | 使える | 「他人」に当たる |
| 兄弟姉妹 | 使える | 父母・配偶者・子には含まれないため |
| 配偶者(妻・夫) | 使えない | 人身傷害・搭乗者傷害でカバー |
| 子ども | 使えない | 同上 |
| 父母 | 使えない | 同上 |
| 運転していた本人 | 使えない | 同上 |
意外に思われるのが兄弟姉妹です。同居していても、兄弟姉妹は「父母・配偶者・子」に含まれないため、対人賠償の対象になります。
私も気になって、契約している三井ダイレクト損保の約款を実際に読んでみたことがあります。同乗者でも「他人」であれば補償の対象と読み取れる記載でした。ただしこのあたりは会社や商品によって細部が違うので、気になる方はご自身の約款を確認するか、保険会社に直接聞くのが確実です。
逆に注意したいのが、家族は「車に乗っていなくても」対人賠償の対象外だという点です。歩いている自分の子どもを自分の車で轢いてしまった、というケースでも対人賠償は使えません。この場合も人身傷害でカバーすることになります。
対人賠償・人身傷害・搭乗者傷害の役割分担
「他人は対人賠償、身内は人身傷害」という住み分けになっています。3つの補償を並べると関係がはっきりします。
| 誰のための補償か | 過失があっても出るか | 支払われ方 | |
|---|---|---|---|
| 対人賠償 | 他人(相手・歩行者・他人の同乗者) | 相手への賠償責任に応じて | 実際の損害額に応じて |
| 人身傷害 | 自分・家族・同乗者 | 出る(単独事故もOK) | 実際の損害額に応じて |
| 搭乗者傷害 | 車に乗っていた人 | 出る | 入院・通院日数などに応じた定額 |
人身傷害の重要なところは、自分に過失があっても支払われる点です。
交通事故では、こちらが被害者に見える状況でも過失ゼロと認定されることはそれほど多くありません。仮に自分の過失が20%とされれば、治療費のうち20%は相手から出ないことになります。この自己負担分を埋めるのが人身傷害です。相手のいない単独事故でも使えます。
搭乗者傷害は損害額に関係なく定額で早く出るのが利点で、人身傷害の上乗せとして考えるのが実務的です。
【実体験】20等級・ゴールド免許でも無制限を外さない
私はゴールド免許を維持していて、保険等級もずっと無事故の20等級です。割引率で言えば最も有利な状態にあります。
それでも、対人賠償と対物賠償を無制限以外に設定したことは一度もありません。
理由は単純で、等級や免許の色は「事故を起こさない保証」ではないからです。20等級は過去に事故を起こしていない実績にすぎず、明日もらい事故に遭わない根拠にはなりません。どれだけ気をつけて運転していても、不可抗力で巻き込まれて過失を問われることはあります。
自分の車をぶつけて壊すだけなら「あーあ、やってしまった」で済みます。しかし相手にケガを負わせたり、死亡させてしまったら、その後の人生が丸ごと変わります。金額の上限を自分で決めておく理由がどこにもありません。
あわせて、私は対人・対物を無制限にしたうえで、対物超過修理費用特約も必ず付けています。
対物賠償を無制限にしていても、支払われるのは相手の車の時価額までです。相手が年式の古い車に乗っていると時価額が低く見積もられ、直すのに必要な修理費が出ないことがあります。そのときの不足分を埋めるのがこの特約です。保険料の上がり方もわずかなので、私は外したことがありません。詳しくは対物超過修理費用特約は必要?対物無制限でも相手の車が直らない理由にまとめました。
「任意保険」という名前ではありますが、相手にきちんと賠償できる状態にしておくことは、車を運転する側の義務だと考えています。保険料を下げたいなら、削るべきは別のところです。
見直すときに確認したいこと
- 対人賠償が無制限になっているか(1億円・2億円などの上限設定になっていないか)
- 人身傷害を付けているか。付けている場合、補償額が3,000万円などの低い設定になっていないか
- 家族を乗せる機会が多いなら、人身傷害の金額を厚めにしているか
- 人身傷害が「搭乗中のみ」型か「一般型」か把握しているか(2台目以降は重複しやすい)
特に多いのが、保険料を下げようとして人身傷害の金額を落としてしまっているケースです。対人賠償が無制限でも、自分と家族のケガを守るのは人身傷害の側なので、ここが薄いと肝心なときに足りません。
削ってよい補償と、削ってはいけない補償の順番は自動車保険の見直し完全ガイドに整理しています。
まとめ
- 自賠責のケガの限度額は120万円。治療費・休業損害・慰謝料をすべて含むため簡単に超える
- 死亡・重度後遺障害では3億〜5億円の認定例がある。対人賠償は無制限が前提
- 同乗者でも友人・兄弟姉妹は「他人」なので対人賠償が使える
- 配偶者・子・父母は対象外。車に乗っていなくても対象外なので、人身傷害でカバーする
- 人身傷害は自分に過失があっても、単独事故でも出る。ここを薄くしないこと
対人賠償を無制限にすること自体は、保険料への影響がほとんどありません。本当に差が出るのは、無制限を前提にしたうえでどの会社を選ぶかです。
保険料は「同じ補償」でも会社によって変わる
対人・対物を無制限にしても、会社によって保険料はかなり変わります。満期が近い方は、補償を削らずに保険料だけ下げられないか一度比較してみると、差がはっきりします。見積もり後に営業電話がかかってこないので、気軽に使えます。
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